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ファイアーライト(暖炉の光)の魔法
(母のしつけ、代理母の話、1837年のイギリス:ソフィー・マルソー主演)

ロリエ先生(ソフィー・マルソー:家庭教師、代理母、ルイザの母):
  ゴドウィンさんのご指示を頂きにきました。
  これから1ヶ月間の勉強をまかせてもらえますか?
  お嬢さんは、勉強部屋にじっとしていません。
チャールズ・ゴドウィン:だめだ。嫌いな勉強を無理にする必要は
   ない。いずれあの子は、世間の冷たさを知る。せめてそれまで楽
   しく過ごさせてやりたい。
ロリエ先生:分かりません。
  このままでは、あの子はだめになります。
チャールズ:娘を閉じ込める気か?
ロリエ先生:あの子は、あなたの他、誰からも愛されない子になる
   わ。あの子は無知で孤独です。このままでは自分の殻から抜け出
   せないわ?
   私ならあの子を助けられます。私の言う事を聞いてくれるように
   なれば。
チャールズ:あの子を傷つけたら許さんからな。
ロリエ先生:私があの子を傷つけられると思ってるの?約束します。
   ルイザにした事は自分にもすると。
   あの子に愛されたい?あの子も皆に愛されなきゃ。あなたはいつ
   か死にます。
  ・ ・・・・
ロリエ先生:暖炉のお話を知ってる?
ルイザ:どんな話?
ロリエ先生:魔法のお話よ。暖炉の光は時を止められるの。ランプ
   の火を消して、暖炉の光に照らされるとどんな約束事もなくなる。
   どんな事もできるし、何だっていえる。何にでもなれるの。
   でもランプに火が入るとまた時が動き出してそれまでの事はすべて忘
   れさられるの。まるで何もなかったようにね。
ルイザ:なんでもできるの?
ロリエ先生:そう。
ルイザ:ここを出たい。
ロリエ先生:いいわよ。お昼から開けてあるわ。
 ・ ・・・
チャールズ:ルイザ、離しなさい。ダダをこねないで、お勉強だろ。
ロリエ先生:おしかりになれば?
チャールズ:何をいう。私は、娘の気持ちを思って、
ロリエ先生:子どもを思う事と甘やかす事は違います。
ルイザ:行きたいなら行っちゃえばいいんだわ。
チャールズ:大丈夫だよ。
ルイザ:私なんかどうだっていいんでしょ。
 ・ ・・・・
ロリエ先生:さあ、やっと2人になれたわ。
  お勉強を始めましょう。
ルイザ:召使いの言う事なんか私は聞かない。
  あなたはしもべで、私に従わなければ。
ロリエ先生:もうたくさんです。あなたは私に従いなさい。私はあ
   んたの先生よ。少しでも、失礼な話し方や声を出すと許しません
   よ。
ルイザ:召し使い、召し使い、召し使い・・・
ロリエ先生:私は、召し使いでなく囚人です。あなたも大人になっ
   たら、囚人になるのよ。あなたが女である以上は。結婚すれば、
   あなたのものはみな相手のものになるし、結婚しなくても、女が
   なれる職業は、家庭教師だけ。それも、一生屈辱と孤独がつきま
   とう囚人としてくらすのよ。でも心の中だけは、檻に閉じ込めら
   れない。だからあなたに、読み書きを覚えて自分の人生を生きて
   ほしいの。
  ・ ・・・
チャールズ:ロリエ先生、あの子は絵を見てあてずっぽうでいって
   いるのではないか?
ロリエ先生:そうです。読んでいるふりをしています。でもそのう
   ちふりが本当になります。
(イギリス・フランス共同制作:サン・セバスチャン国際映画祭審
   査員特別賞受賞、1999年劇場公開)