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銀河鉄道の夜―白線流し(25歳)より(2004年フジテレビ)

バルドラの野原に一匹のサソリがいて、小さな虫などを殺して食べて生きていたんですって。ある日、イタチに見つかって食べられそうになった。サソリは一生懸命逃げて、逃げたけれど、とうとうイタチに押さえられそうになったわ。そのとき、いきなり前に井戸があって、その中に落ちてしまった。もうどうしても上がれなくって溺れ始めたの。その時サソリはこういってお祈りしたというの。ああ、私は今までいくつの命をとっかた分からない。その私が、イタチにとらえられようとした時、あんなに一生懸命逃げた。ああ、なんにもあてにならない。どうして私は、私の体を、だまってイタチにくれてやらなかったのだろう。そうしたら、イタチは、1日生き延びれたろうに。どうか神様、私の心をごらんください。こんなにもむなしく命を捨てず、どうかこの次にはまことの皆の幸いのために私の身をおつかいくださいと言ったというの。そしたらいつかサソリは、自分の体が、真っ赤な美しい火になって、燃えて闇を照らしているのを見たというの。(サソリ座)